第七夜
第八四話

題名
きっかけ。

投稿者
葬儀屋様



それは、俺が小学3年生の時だった。
学校が終わり、自転車に乗って、ダチの家に遊びに行った帰り。
そこを自転車を押して帰ってたんだ。
自転車を道の中央に、左側の端を俺は歩いていた。
周りはたんぼや畑に囲まれてて、一本の長い道。
俺以外誰もいなかった。
真ん中辺りにさしあたった頃、不意に左足を踏み外したんだ。
俺は自転車諸とも畑にダイブした。
畑と自転車に挟まれて、まだちっこかったから身体の上に乗っかった自転車を持ち上げられない。
その上足を捻ったみたいで痛い。
周りは誰もいない。
このままだったらどうしようって俺は不安で泣いた。
そしたら急に、大丈夫?って声がしたんだ。
見上げたら、カップルが俺を見下ろしてる。
助けてって言ったら、男性が飛び降りてきて、自転車を退けてくれた。
俺を道に上げてくれて、自転車も上げてくれた。
女性は持っていたハンカチで、俺の顔や服についた土を払ってくれた。
落ち着いた俺は、ありがとうって頭を下げた。
顔を上げたら、カップルがいない。
周りを見渡してもカップルどころか誰もいない。
走ったって、小さく見えてもいいはずなのに。
誰もいなかった。
今思えば不思議なんだ。
夏の暑い日、カップルは全身真っ白な格好をしていた。
男性は白いシャツに白いスラックスに白い靴。
女性は白い女優帽に白いワンピースに白いハイヒールを履いていた。
鮮明に覚えてる。
でも、いくら思い出そうとしても、未だに顔だけ出てこないんだ。
それから俺は、人に見えないものが見えるようになった。
でも、それでもいい。
もう一度あのカップルに逢いたい。
逢って、ありがとうって言いたい。



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