第七夜
第八三話

題名
工事現場

投稿者
穴掘り様



私は、大きな土木工事現場をいくつもやってきましたが、若いころは感受性が高かったのか、しばしばその種の体験しています。
ここでは、くわしい話は控えさせていただきますが、今は市街地化された六甲山山中の高速道路とだけ申しておきましょう。
私たち工事屋は、工事着手前に土地の境界杭や関連の杭の確認を行います。
そのときも山の斜面を這いまわりながら、それらの杭を順番に探していましたが、里道にさしかかったとき、大きな空気の塊に突き当たったような強い抵抗を感じてふと立ち止まりました。
それはすぐに分かりました。数歩も山の中に分け入らぬうちに苔むした古い古い墓所が現れたのです。
その夜のこと。暗い部屋の隅になにかいるとことを感じ、『分かったよ、明日行くから・・・』と念じ就寝しましたが、私の足元の周りには何人かが一晩中じっと下を向いて座っていることだけは感じておりました。
翌日その墓所を抜け、山の稜線付近を調査していると足元に赤っぽいかわらけが散っているのを発見、帰って確認してみるとすでに遺跡調査済みで、それは昔のかめかん(陶器の棺桶)のかけらでありました。
私は、米、塩、酒を持って山を登り、手を合わせましたが、この土地に生きて亡くなっていった方々の歴史を感ぜざるを得ませんでした。
もっとも、私の部屋においでになったご縁のあった方々は、とても優しかったようで、その後悪さをすることはありません。その墓所は今でも高速道路の橋の下でひっそりと歴史を刻んでおりますが、私たちの走っている高速道路の下には、先人の歴史があることを忘れないようにしたいと思います。合掌



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