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●近所の怪談第七夜
全国よりご投稿頂いた恐怖体験談を掲載しています。
 

     
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怪談数  御 題    御投稿者様
0690 ロフトから またたび 様
転勤先の住居で実際に起こった出来事です。
販売員をしていた私は5年前、地方の店舗へと異動することになりました。本来なら社宅への引越しになるのですが、私は猫を飼っていたため社宅には住めないということで、自分で部屋を探すこととなりました。
あまり時間もなかったので、不動産に駆け込み『猫の飼える安い物件』を紹介してくれるよう頼みました。
いくつか紹介された中で、駅近、ロフト付き、ペットOKで3万円という物件が気に入り、急いでいた私は内見もしないまま決めてしまいました。
木造で少し古いアパートではありましたが、特に問題があったわけでもなく、半月ほど経ち、私はある事に気付いたのです。
好奇心旺盛な飼い猫が、部屋のロフトに上がりたがらない。興味を示すものの、必ず途中で引き返してくるのです。
3畳ほどのそのロフトは、天井も低いため物置として使っていたのですが猫でも登りやすい緩やかな階段だったにも関わらず、不思議に思っていました。
まだ新しい部屋に慣れてないんだな、と大して気に留めなかったのですが私自身にも、奇妙なことが起こりはじめたのです。
寝つきが格段に悪くなり、毎晩のように金縛りに合うようになりました。
はじめのうちは仕事のストレスだろうと思っていましたが、一晩に何度も、何度も息苦しさで目が覚めてしまうのです。
誰かに首を絞められているような、あるいは体を押さえつけられているような感覚でした。
霊感があるわけでもないので、『疲れてるんだな…落ち着くまで我慢しよう』とそう言い聞かせていました。

ある夏の夜、私は扇風機をつけたまま眠りについていました。
私はロフトの階段の方に頭を向けて寝ていたのですが、ふと、頭上に気配を感じたのです。
『あ、誰かが私を見下ろしている』徐々に迫る息苦しさを感じながら、私はそう思いました。
夢か現実か、頭の中がボーッとする中、その気配はいつの間にか頭のすぐ後ろに移動していました。
『今、誰かが、そこに立っている』
何故かは分からないけれど、そう確信しました。
そしてうるさい耳鳴りと共に、その何かが揺り起こすかのように私の体に触れたのです。肩に気持ち悪い感触が走りました。
恐怖と怒りを感じ、私は身動きのできない体で必死にもがきながら、ようやく動いた左手でそれを振り払おうとしたその時手のひらで感じたのは、驚くほど生々しい人間の頭でした。
生温かい、髪の毛の感触に頭が真っ白になった瞬間、ぱっと目を開けると
黒い男の影が私の左側に座っているのが見えたのです。
叫ぶこともできず、飛び起きて部屋の明かりをつけた瞬間さっきまで動いていた扇風機のスイッチが急にプツンと切れました。タイマーをつけたわけでもないのに。
しーんと静まり返る中、ふと玄関を見ると猫が全身の毛を逆立てて一点を見つめていました。その視線の高さからして、何かがそこに立っていたのだと思います。
猫は身動きもせず、ただ怯えているようでした。

それからしばらく部屋の明かりを付けたまま、恐ろしくて眠れない夜を過ごしました。

それ以来、あの影が現れることはなく、あれだけ悩まされた金縛りがピタリと止んだのです。そして、ロフトを嫌がっていた猫も自分で上がって遊ぶようになりました。
今思えば、ロフトに居た何かが、あの夜私の部屋から出て行ったのかもしれません。

1年後、また転勤で引っ越したのですが
あの夜のことは、今でも忘れられない思い出です。

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