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●近所の怪談第七夜
全国よりご投稿頂いた恐怖体験談を掲載しています。
 

     
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怪談数  御 題    御投稿者様
0684 雨の中にいた モリス 様
放課後。授業が終わって帰宅する生徒や部活に行く生徒を尻目に俺は仲の良いやんちゃグループの面々とストーブの前で屯っていた。
そのうち騒がしかった教室も静かになって、気が付くと自分達を除いて数人の生徒しか残っていなかった。
俺は毎日のように放課後こうして残っていたので、その数人の生徒の顔はよく覚えている、だからこその違和感だった。
窓側の後ろから二番目の席、普段は授業が終わったら足早に帰宅するような真面目な生徒…そんな男が珍しくも未だ椅子に腰かけていたのだ。
この男、ここではRとしておく。Rは椅子に座ったままジッと窓の外を見つめていた。
何か面白いものでもあるのだろうか?と自分も同じ方向を見たが大して変わったものは見当たらなかった。
精々遠くの公園で老人達が集まってゲートボールをしているのが見えるくらいだ。
「寒ぃーしコーヒーでも買いに行かね?」
誰かがそう言ったらしく、他の奴等もそれに賛成して一階にある自販機まで行くことになった。
俺はストーブから離れるのが嫌だったので適当に金だけ渡して教室に残ることにした(今考えると嫌な奴だ)
連中が居なくなったことで一層静かになった教室の端、俺はなんとなく未だ窓の外を見つめるRの様子を見ていた。
入学式からかなり経つが俺はRと話したことが無かった。Rはどちらかと言うと大人しい印象で、自分からは目立とうとしない男だった
目立ちたがり屋で大人しくもない自分とは合わないタイプだと勝手に決めつけて今の今まで交流を避けてきたのだ。
「な、R君、さっきから何見てるわけ?」
俺は内心緊張しながら話しかけた。傍から見れば茶髪のチャラ男がヘラヘラと絡んでいるようにしか見えなかっただろうが。
Rは首だけをこちらに向けたが数秒置いてまた窓の方に顔を背けてしまった。
シカトすんじゃねーよ、と言おうと口を開けた時、「……公園」と蚊のなくようなRの声が聞こえた。
「公園?ああ、なんかゲードボールやってるよね。こんな寒い日にマジで元気だよなアイツらw」
「いやぁ、違う。」
今度はハッキリした声。だが、違うと言われても何が違うのか分からない。
「あ、何?ゲードボール見てたんじゃないの?」
「よく見てみろよ、雨が降ってるんだぞ」
「あぁ?」
思わず俺は窓を開けて身を乗り出した。手先に水の感触…確かに雨が降っている。それもかなり激しい。
「マジだー…」と呟く俺にRは「知らなかったのか」と呆れたように言った。
「いや〜、普段はコンタクトしてるんだけど、今日は朝寝坊して付けてくるの忘れたんだよね…」
だから全然気付かなかったと照れ笑いする俺にRはふーんと興味なさ気に呟くとポケットから携帯を取り出して操作し始めた。
「変だとは思わないのか?」
そう言うとRは徐に腰を上げて開け放ったままの窓の前に立った。
俺はその言葉の意味が分からず苦笑した。「なにが変なんだよ」そう言おうとした時だ
カシャッ
Rがシャッターを切った。「最近の携帯はズームしても綺麗に撮れる」なんて嬉しそうに笑いながら。
そしてこうも言った
「こんな酷い雨に気付かないほど視力悪いのに、遠くにいるアイツらは見えるんだ?」
何を撮った?なんて聞かなかった、いや聞けなかった。Rの言う通り、何かがおかしいことに気付いてしまったからだ。
もしかして、自分達はなにか見てはいけないものを見てしまったのでは…?
そんな考えが頭をよぎると背中から頭にかけてゾゾッと悪寒が走った。
「ねぇ君、まだアイツらが見えるか?俺には見える。…ハハ、ボールもないのに何が楽しいんだろう」
フハハと笑うRに俺も思わず公園を見た。しかし、
「…な、…」
何も見えなかった。老人どころか公園がある場所さえ霞んで見えない。当たり前だ、コンタクトをしていないのだから。
ザーザーと雨の音がやけに大きく聞こえた。
あまりの事に呆然と突っ立っていると、いつの間にか背後に移動したRが「写真。」と携帯画面を見せてきた。
そして次の瞬間、俺は今まで生きてきた中で一番情けない悲鳴を上げることになる
Rの携帯画面いっぱいに、無表情の老人達が一斉にこちらを見上げている画像が映し出されていた。
俺の記憶が正しければその老人達は全員薄着で妙に目が大きいというか、黒目の部分が多かったと思う。
「うぁぁ〜…」
変な声を出して座り込む俺を見てRはニヤニヤと笑ったかと思うと、ステップでも踏みそうなくらい上機嫌に教室から出て行った
その後、Rは、・・・
2010/12/
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