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 第一夜
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怪談数  御 題    御投稿者様
0100 忘却 たばら
人間は物事を忘れる、または忘れ様とする生物の様です。
もう何年前だか、私がまだ幼稚園だった頃、母が病で死にました。
それからまもなく、新たな母がうちへやって来ました。そして、まるで始めからその人が私の母だったみたいになるのに時間はかかりませんでした。
みんな、新しい母に遠慮してか亡くなった母の話はいつの間にか暗黙の了解で禁句になっていたのです・・
まるで亡くなった母の存在を抹殺したいかの様にも見えました。
私を取り囲む父を始め、祖父祖母といった家庭の大人達は沈黙したまま、私だけえもいわれぬ違和感をどこかでなんとなく感じていました・・
だから新しい母には懐けないまま、それから10年経った、高校生になった頃です。
私の部屋は大きな長者風建築の家の一階、二階に上がる階段のすぐ隣に位置しておりましたが、夜中・・誰かが二階に上がる足音で目が覚めました。
この足音は家族の誰のかでは、ない事はすぐに分かりました。
・・・静かにゴトン、ギシッ、ゴトン、ギシッ。という足音は、父、義理の母は二人してせっかちだから、あんなゆっくり上がりません・・・
確かに二階に二人の部屋があるのですが・・
祖父は亡くなっていたし祖母は私と同様に一階に寝室があるし、何せ足腰が弱っていたし階段を昇るなんてすでにしていませんでした・・・。
しばらくして二階で父と同じ寝室にいるはずの義理の母の悲鳴が聞こえたのです。
「あ、あの人は誰なの?一体誰なのよ・・・?」
義理の母は取り乱して髪をかきむしって、半泣きになって、起きて来た私、父、祖母に問い詰めました。
「あなた達はなんにも私に話してくれないわよね?
私を外者だと思って馬鹿にしてんのね!?・・・」
ついつい本音が出たみたいな事をほざきまくり父に泣いて迫る彼女は浅ましいただの醜い女です。
彼女はその頃、何故かわけもなくそわそわしていたし、挙動不審にもなっていました。
「前の奥さんでしょ?・・私恨まれてんでしょうね?・・ふ、ふふ。何せ私が彼女、殺した様なもんだし・・・でも、それって、あなたも共犯じゃない?ねぇ・・」
(この人、何言ってるの?母は病で・・・)
「お前、よせよ!母さんや娘がいる前で・・・
もう、いい、寝よう!」
まるで父は煙に巻く様に皆を寝かし付けました・・。
彼女・・・義理の母の挙動不審はなおも続き、次第に不眠症になり夜な夜な家を歩き回り出して、ある日豪雨の中、彼女は気が狂いながら包丁で手首を切り死にはしませんでしたが、精神病と判断され精神病院に打ちこまれました。
後で父が改まって、亡くなった母が病だった当日、父は義理の母と不倫をしていたそうです・・
母の死因には、そのストレスもあったそうです。
父が今まで亡き母を忘れた様に、または忘れ様としたには亡き母への罪の重さから逃げるためで、せっかく義理の母が来たのに、そるで壊したくないという保守的な思いからだったそうです。
また、父は母の夢にうなされ癌で亡くなりました。
人は嫌な思い出から逃げようとします。そしてあたかも忘れたように、まるで最初からそんな事はなかった様にも振る舞います・・・。
けど・・実際、その汚点からは逃げ切る事など不可能なのでしょう・・
2008/05/
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